論理の匠 vol.9
~能開センター(小中学生)・能開センター高校部 野口浩志先生~
一貫した「論理」による中学・大学受験指導
論理的読解へ導く指導

―― では、実際のご指導についてお伺いします。これまで何となく文章を読んでいた生徒に対して論理的な読解を教える際には、どのようなアプローチをとられていらっしゃるのでしょうか。
野口 まずは、文章中に何が書かれているのかを客観的にきちんと押さえるところから始めます。例えば、かつて4年生を担当していたときは、生徒に読書感想文を書かせる時に感想とあらすじを別々に書かせていました。
これは、主観(感想)と客観(あらすじ)の違いをきちんと理解させるための作業です。「あらすじには君の感じたことは書かなくていい。何が書いてあったかを正確に書き出す作業が一枚目だよ。二枚目は、それに対して思ったことを自由に書けばいいよ」と指示をします。
―― なるほど……別々に書かせることで、子どもたちも主観と客観の違いを体感することができますね。
野口 そうなんです。単に「主観」「客観」と言ったところで、4年生にはなかなか通じません。だから、あえてこのような作業をさせたのです。普通は800字以内や原稿用紙2枚など、分量を書かせることに一生懸命になりがちです。でも、それでは子どもたちは何を書けばよいかわかりません。
―― 確かにそうですよね。やらせてみて、いかがですか?
野口 あらすじはたくさん書けるけれども、感想は数行で終了…なんてことはよくありました。子どもたちにとっては「自分の考えを持つ」というのはなかなか困難なことです。でも、こちらの主たる目的は「主観」と「客観」の違いを理解させることなのですから、ほとんどの場合は許容しました。はじめからダメ出しばかりすると、子どもたちに「書くことへの抵抗感」を植え付けてしまいかねません。
―― 書かれた内容を細かくチェックする必要があるから大変ですね。
野口 たいへんな作業ですが、最初が肝心なので丁寧にチェックします。 その後、実際に問題にあたる際に、例えば心情問題、芥川龍之介の『トロッコ』―― 三人の子どもだけでトロッコの置いてある村外れまで行く場面 ――で、以下の様な問いがあるとします。
問:「トロッコは三人の力がそろうと、突然ごろりと車輪をまわした。良平はこの音にひやりとした。」とありますが、下線部において、良平はなぜひやりとしたのですか。
この時、いきなり解答を書かせるのではなく、「君ならどうする?」「君がこういう場面に遭遇したら、どういう気持ちになる?」と、子どもたちの主観をすべて吐き出させます。その後、「では、文章に書かれていることから考えると、良平はなぜひやりとしたと言えますか」という感じで、子どもたちの頭のスイッチを主観から客観に切り替えます。
―― このような練習を積み重ねることで、読み方も変わってくるでしょうね。
野口 少しずつですが、確実に変わってきます。でも、まだまだです。ここまででやっとスタートラインに立ったところです。ここから徐々にではありますが、実際に文章を分析する段階に入っていきます。
問題文も最初は意識して短く、徐々に分量を増やすようにしています。自転車の補助輪をだんだん外していくようなイメージです。はじめは補助輪をつけて自転車に乗せるみたいな感じで転ばないようにしてあげます。あとは片方を外して、そして両方を外す….このように徐々に補助輪を無くしていきます。最初からいきなり「補助輪なしで自転車に乗れ」と言われても普通の子は乗れないように、いきなり問題をやらせてもどういう手順で解けばいいのか、これまで何となく文章を読んできた子どもはわかりませんからね。

