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探訪・論理の匠

論理の匠 vol.9

~能開センター(小中学生)・能開センター高校部 野口浩志先生~

一貫した「論理」による中学・大学受験指導

中学受験も大学受験も国語で必要な力は同じ

―― 現在、野口先生は小学生と高校生を指導されていますね。中高一貫の学校で、高校の先生が中等部で教えるという事例はよく見かけますが、小学生を教えながら同時に高校生を指導するのは、非常に珍しいですよね。

野口 おそらく、そうでしょうね。例えば、国公立大学二次試験直前期は、昼間に能開センター天王寺校や貝塚校で受験間近の高3の生徒を教えて、その日の夜に泉佐野校で小5の生徒を教えることもあります。

―― 先生の頭の切り替えは、大変でしょうね。

野口 相手が18歳と11歳ですからね。東大・京大等を受験する高校生の論述添削を行った後に、小学生に主語・述語などから教えるというのは、頭の切り替えという点ではさすがに大変です。

―― 説明するときも、話し方を変えないといけないですよね。

野口 たしかにそれは必要です。ただ、高3でも小5でも、問題文に出される文章のテーマや抽象度はもちろん違うにせよ、身につけさせたい力、目標としているところは同じです。結局、中学受験であっても大学受験であっても、その文章がどのような「論理」で展開されているかをおさえる必要があるということでは共通しています。今回はそのサンプルとして、東京大学の入試問題、大学入試センター試験の問題、灘中学校の入試問題を実際に見てみることで、どのような学力が求められているのかを説明していくことにします。

~東京大学の入試問題~

東京大学の入試問題

野口 少し古い問題ですが、「脳死」という、現在においても議論が続いている非常にデリケートな話題を扱っています。何となく読んでしまってはなかなか理解できませんが、本文の「論理」を正しく把握することで、本文の主題が理解できるようになります。実際、灘中学校などの最難関中学校を目指す小学生たちには、あえて大学入試の問題に取り組ませることもあります。抽象度が高く感覚的に処理できないため、論理を手がかりに解答を導くしかなくなるからです。

―― 小学生に! 本当に読めるのですか?

野口 もちろんいきなりは無理ですが、訓練次第では読めるようになります。

1.「論理」の把握

野口 この文章には明確な対立関係が存在します。それは「心臓死」と「脳死」であり、傍線部の「向こうから訪れる死」と「みなしの死」です。また、傍線部の次の段落を見ると「役立たない自明の死」と「役立つ死」、さらに次の段落を見ると「無意味な喪失」と「生産的な死」「人間的な死」という、やはり対立関係が存在します。では、これらに共通する言葉は何でしょうか。

―― ……「死」でしょうか?

野口 はい、正解です。文章中に対立関係が出てきたときは、共通項は何かを探すようにします。共通項が見つかると、その文章に何が書かれてあるのかが見えてきます。

共通項

2.「論理」の整理

野口 次に、設問で何を聞かれているのかを確認します。【「向こうから訪れる死を『みなしの死』と置き換えるということ」とあるが、どういうことか、説明せよ】とあります。仮に傍線部の前者をAとし後者をBとすると、この傍線部は「AをBと置き換える」となっていることになります。ということは、A・Bそれぞれが何を指すのかを明らかにすることをこの設問は求めているわけです。当然、自分で創作して書くのではなく、AとBについて文章中で説明されている該当箇所を探します。その際ポイントとなるのが、先ほど挙げた対立関係です。

野口 傍線部の次の段落を見ると、17行目に対立関係である「役立たない自明の死」と「役立つ死」を含む一文があります。「役に立たない自明の死を、人間の利益にそくして人間が規定する役立つ死へと転化することである。」 これはどういう意味かわかりますか?

―― 抽象的なので、これだけを見てもよくわからないですね。

野口 そうですよね。さすがにこのままではよくわかりません。でも、この「役に立たない自明の死を~」の文章の直前に「言ってみれば」という接続語があります。つまり、この文は15行目からの一文【この「みなしの死」によって、「誰でもない身体」は もはや「人ではない身体」となり、脳死身体の「資材」化への道が開けることになる。】を言い換えたものであり、ここにはイコールの関係が成立します。この論理的関係の発見も重要なポイントです。つまり、傍線部からここまでを整理すると以下のような図になります。

―― 徐々に整理されてきました。

野口 さらに次の段落を見ると、もうひとつの対立関係である「無意味な喪失」と「生産的な死」を含む部分があります。【その人間にとっても、死だけは最近まで、無意味な喪失であり続けてきた。だが、……この「みなしの死」によって、今や死は新しい「資材」を分泌する生産的な死、人間自身の規定する「人間的な死」となった】とあります。したがって、この段落を整理すると以下のような図になります。

―― 図式化することで、複数の共通項が見えてきました。

野口 では、ここまでの「論理」を整理してみましょう。

3.解答の作成

野口 このような文章の「論理」を把握し整理できてはじめて、解答作成のステップに移ることが可能になります。傍線部の「向こうから訪れる死」と「みなしの死」が文中でどのような形で説明されているかについては既につかんでいるので、自動的に解答は完成します。

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