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探訪・論理の匠

論理の匠 vol.5

~志桜塾代表 長谷 剛先生~

最強のプロ国語教師は、平成の吉田松陰だった

- 第1部 それは、国語という名の魔術だった-

2.脳の機能から考える

 では、このカードを覚えて(と、「猫」、「桜」、「電車」のイラストが描かれたカードを取り出す)。
はい、B、100引く7は?

生徒B 93。

長谷 93引く7は?

生徒B 86。

長谷 86引く7は?

生徒B 79。

長谷 もっと速くね、引く7は?

生徒B 72。

長谷 引く7。

生徒B 65。

長谷 引く7。

生徒B 58。

長谷 はい、最初の3つのカードを言ってみて。

生徒B 猫、電車、桜。

長谷 おう、偉い。こういうのを「作業記憶が強い」って言うんだ。
入れ物の構造をしていて、何か作業をしている、その作業途中に別の何かが入る。その後また、最初のものを思い出す、という記憶のカタチを作業記憶と言います。
国語はこの作業記憶を使って解かないといけない。その代わり作業記憶は、どんな人でも数分しか持ちません。ちなみに、感覚記憶は20秒で消えてしまいます。
――そもそも、脳の容量って、どのくらいだったっけ?

生徒C 結構多め。

長谷 結構ってどのくらい?

生徒C ……。

長谷 例えば、パソコンの記憶単位はバイトと言うよね。長谷の「ハ」だったら、2バイトになる。「HA」って書くから。
では良く聞くキロバイト、メガバイトという単位はどうだろう。
キロは2の10乗、メガは2の20乗だが、さてD、2の20乗はいくら?

生徒D えー?

長谷 スッと言えたら、お前、本当にすごいと思うけどね。

生徒D 1,024。

長谷 それは2の10乗だろ。

生徒D あー、そういうことね。

長谷 うん。2の10乗は1,024。ここら辺まではだいたいの人、覚えるよな。
……それ今の計算しよるの?

生徒D (ノートに計算中)

生徒E 104万8576ですか。

生徒D すげーな。

生徒E いや、1,024と1,024で出す。

生徒D ああ、そうか。

長谷 それで100万っていう単位を大体メガって言うんだけど、正確に言うと2の20乗なんだ。携帯持っちょるよな、Aのカメラは何メガ?

生徒A え、低いですね。3メガぐらい。3メガ。

長谷 3メガって低いと思う? 300万。結構高いよね。ところが今は、さらに1000万画素とか言うじゃない。
さて、冷静に考えていこう。先ほど「ハ」が2バイトだと覚えた。でも、今言ったように、「3メガでも結構低い」という感覚を我々は持ちがちだ。
ところで、そもそも人間の記憶というのは、「バイト」ではなくて、イメージで記憶するよね。
例えば自分の人生を、ずっと“目”というビデオカメラで撮りっぱなしだとして、カセットが頭の中にあるとすると、どれぐらいでいっぱいになると思う?
――これは、生まれてからたった3日でいっぱいになる。映像・イメージを撮るというのは、それだけ容量が大きいんだ。いっぱいになったらどうしたらいい?

生徒C リセット。

長谷 リセット? 人生をリセットするかい?(笑)
結局、映像を捨てないといけないことになるよね。
つまり、我々の記憶というのは、ものを忘れることが前提なんだ。そうしないと3日間でもう、ハードディスクの容量、つまり脳の容量がいっぱいになるから、とにかく忘れましょうという構造になっている、ということだ。
D、今まで何日間生きてきた?

生徒D 計算できません。

長谷 と、いうぐらい君たちは、ものを忘れることが大前提なんだ。またいずれ話してあげるけれど、長期記憶においては、ものを忘れることが前提の我々が、ものを覚えるためにはどうすればいいのか、ということがテーマになってくる。
さらに、現代文に至っては、数分しか持たないような短期記憶、作業記憶を使わないと解けない……。分かる?忘れることが大前提だ。
ならば、どうしたらいい? E。

生徒E 本文を読むときに線を引く。

長谷 線を引っ張ったり、メモしたりするよね、普通。
まあ、パーフェクトな脳を持っている人は、きれいなままだよね(笑)。
隣の子に、さっきの本文を見せてごらん。わたしの脳はパーフェクトであることをアピールするか、わたしって普通の人間なのかをアピールするか、の違いだな。
(とある生徒の何も書き込んでいないノートを取り上げて)
これ見てごらん。超天才だ、ということでしょ(笑)。
それは冗談だけど、人間の記憶ってこんなものなのだから、「絶対に覚えられない」ということを前提にスタートすると、どうしてもメモするしかないんだ。
記憶は1時間経つと、もうほとんど忘れてしまう。60%、70%以上忘れてしまう。 ならば、必ずメモをしないといけない。

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