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探訪・論理の匠

論理の匠 vol.5

~志桜塾代表 長谷 剛先生~

最強のプロ国語教師は、平成の吉田松陰だった

- 第4部 平成の松下村塾へ-

高校を辞めた理由

―― 高校教師を辞めるという決断の理由は。

長谷 貧困の連鎖が始まってしまうということが一つ。私自体がいろんな学校に行くのは、もちろん公立の宿命なので仕方がないにしても、島根県はいま、そういう状態じゃないと思ったのです。

―― はい。

長谷 例えば、今、東北のことを引き合いに出すのははばかられるのかもしれませんけども、緊急事態なんです。
要するに、みんなが各学校へ行って、みんなで底上げをしようというのは、確かにそれは正しいし、公務員として当たり前だと思います。しかし、来年、再来年のうちに島根がダメになるかもしれないという状況なのに、みんなが平等というルールをいまだに守ろうとすることに疑問を感じてはいました。
前、東大に受かったYという女の子も、Hという子も、合格には届かないレベルの子だったんです。でも、この子たちは、僕の感触として「受かる」という確信があった。
なぜか。彼女たちの生きざまが良かったからです。放課後の疲れている中、しかも東大志望で沢山の教科を勉強しなくてはならないから余裕がないはずなのに、Hという子は、放課後ずっと、他のできない生徒に生物を教えたりしていましたから。

―― ほう。

長谷 女の子が廊下でですよ。廊下の冷たいタイルの上で、3人で車座になって勉強しているんですよ。
「おまえら何しとん、こんな汚いところで」って聞くと、「しゃべるから、みんなに迷惑かかるんで」って答えて。Hは、ずっと他人のことばかりやっていたんです。
こういう子が東大という最高峰のところに受からなかったら、多分、東大に行く価値はないと思うんですね、逆に。

―― なるほど。

長谷 行っても意味ないと思うんです。だけど、Hは逆転で受かったんですよ。だからこそ東大は、やはり優れているなって思いますよね。
ただ、この生徒たちは優れていたけれども、指導する側も、本当に魂込めてやっていかない限りは、東大はそう簡単に受かるところじゃない。
でも、逆に言うと、魂が入った子は必ず受かるというところが東大だと思っているんです。

―― はい。

長谷 技術だけじゃないんです。
このままじゃ島根がダメになる。で、上位の生徒、国語を伸ばしたいという生徒、東大に入りたい生徒。でも、やっぱり国語はできないし、そういう子たちを僕は救いたい。

―― すごく伝わってきます。

長谷 辞めると決めた次の日、3・11の地震があって、やっぱり、すべての物っていうのは流され、壊れていく。だけど、生き方とか生きざまっていうのは、絶対残るんじゃないかと考えました。

―― なるほど。

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